『水の音しかしない』/山本澄人

東日本大震災を意識して書かれていることは序盤ですぐに分かる。突然いなくなった同僚とか午後2時46分の単語とか。でもなぁ、結局何が言いたかったのか分からない。ファンタジー要素が強く始まるために、「現実感あふれた日常からの突然の悲劇」というには焦点がぼやけてるように思う。大震災ほどの悲劇は確かに現実であるがとても現実とは思えないものであり、突然の悲劇を描くなら前段(または対比?)として日常の現実をもっと描かないとこの作品の意思がどこにあるのかよく分からなくなってしまうんじゃなかろうか。
時系列と現実・非現実の区別が自分には判断できず、もやもやしたまま終わってしまったのは残念だった。中嶋とかビッグ斉藤とか森林サリーとか、伏線にも似た彼らの登場がどういう意味を持つのか、きちんと回収してほしかったなぁ。(ただ単に自分の読解力がないだけという可能性は勿論自覚しています、誰かこの作品の意味を教えてほしい)