読書

『たゆたうひかり』/窪美澄

一転、人生の悲劇をハイライト的に扱い、バリキャリOL、不倫に海外放浪。忙しない都市への批判に対して田舎の礼賛。いかにもなこれらのキーワードが鼻について楽しめなかった。どうもこの作家さんは好きになれなさそうだな。(世間で評価されてる『ふがいな…

『たわいもない祈り』/大沼紀子

好物。素朴で庶民的な空気、どこか自分に自信を持てない主人公に、これから始まる何かを予感させる展開。自信はもてないけどじりじり一歩ずつ進んでいる感じが、好き。

『クチナシ』/馳平啓樹

日常の中の素朴な感情を丁寧に紡ぎ上げることができる彼が、人間の嫌な部分を描くとここまで陰鬱になるのか。小説家ってすごいな。人生の中で目を背けたくなる部分ていうのは確実に存在しているけれど、そればかりが人生になるなんてなんたる地獄だろう。や…

『こどもの指につつかれる』/小祝百々子

語る言葉を持たない。沈黙。 片腕を失った65歳独身の老人が主人公。弟がひどいやつで、主人公の片腕を失った原因を作り、さらには主人公から奥さんを連れ去ってしまう。。。主人公は、どこか心に傷を抱えているように思える女性に思いを寄せるけど上手くはい…

『かわいそうだね?』/綿矢りさ

あかん、自分の大嫌いな自意識過剰自信家女の女性謳歌物語だった。綿矢さんも美人だから、当たり前のようにこういった意識をもって生きているんだろうねぇ。自分が何を与えるかなんて微塵も考えず、相手から与えてもらうことばかりを当然のように考える女の…

『恋愛雑用論』/絲山秋子

絲山秋子の描く屹立とした女性と山崎ナオコーラの描くそれは似通っているように思えるのだけど、どうだろうか。これくらいに自分の意見を持って、自分の意思で世界を見、自分の感情を正としなければ、自分の人生を歩んでいるとは言えないのだろうか。最近は…

『十三月怪談』/川上未映子

自分が幼少の頃から患っている病気が腎臓のそれであるから、どうしてもそこに敏感に反応してしまって冷静には読めなかった。ていうか、腎臓の病気ってそんなに進行が早く死に至るものってあったっけ?発見が遅れれば致命傷になるのはそうだけど…。 愛しあう…

『奇貨』/松浦理英子

最近は孤独な中年(男女問わず)が主役の小説となると興味津々で読んでしまうから困る。つまりは自分の近い将来の予習ということ。純文学なんて知ったこっちゃなくて、こんな俗な触れ合いしかできないのが自分である。 孤独が身に染みる40代男性(本田さん)…

『いつも彼らはどこかに 第一回・帯同馬』/小川洋子

面白かった。こんなに暗い人生を題材にする作家さんとは思っていなかったので吃驚した。 遠距離への移動に恐怖を覚える女性が主人公。デパートでのデモンストレーションガール(試食をすすめる売り子さん)を生業としている彼女のその気質も異常さをもつが、…

『K』/三木卓

人の、夫婦関係まで含む半生を聞く機会は貴重で、飾り気なくここまで記してくれた作品と出会えたことは今後の指針になりそうな気がする。小説家の自伝的な作品とは読み易く人生訓も得られ、いいものだと思った。 自分に少しコンプレックスを持っていてふられ…

女たちのサバイバル作戦 ネオリベ時代を生き抜くために 第4回 ネオリベと少子化/上野千鶴子

思わずして、遭遇。モテ願望にまみれつつミソジニーにかかった自分には、上野千鶴子の評論は面白くて仕方がないようだ。女性を過去「クリスマスケーキ」、今は「大晦日」と例えること、こういう物言いを知って「うわ、おもしれぇ」とか思ってしまうあたり、…

『仲良くしようか』綿矢りさ

どうした、どうした。女優の体(てい)で書いてみた?ちょっと自意識過剰で、自傷癖があったりして、男性依存的で、美しくて、上辺だけのマナーを虚構に感じてみたりする、少し背伸び気味の女の子。自分は読んでいないけど、そういえば女優を主人公にした小…

『曖昧な風が吹いてくる』/馳平啓樹

また(というと失礼かもしれんが)下請け自動車部品メーカーの悲哀が主人公。相変わらず文章が上手い。働くってこんなに気が重く苦しいものか、嫌になるくらい伝わってくる。ここまで人を酷使して、かつ、将来が見えないなんて、日本はなんて国になっちゃん…

『水の音しかしない』/山本澄人

東日本大震災を意識して書かれていることは序盤ですぐに分かる。突然いなくなった同僚とか午後2時46分の単語とか。でもなぁ、結局何が言いたかったのか分からない。ファンタジー要素が強く始まるために、「現実感あふれた日常からの突然の悲劇」というには焦…

『八月は緑の国』/木村紅美

32歳の独身女性と女子大学生。二人の視点が交互に繰り返される小説って、面白いよね。個人的には32歳独身女性のやさぐれ感が好み。そこまでするかって点はところどころあるけどね。そして、若い(華の盛りである)女性から32歳独身女性を見るとそりゃあそう…

『髪魚』/鈴木善徳

老いた人魚を拾い、家に連れて帰る。いきなりのファンタジーでこれは自分には合わなさそうだという予感も、その読みやすさからぐいぐい引きこまれ一気に最後まで読まされた。面白かった。消費社会の虚無に対する警鐘は既にありふれた視点ではあるけれど、家…

『きんのじ』/馳平啓樹

倒産寸前の自動車会社で働く主人公。自分のことをどこか価値のない人間と思いつつ、拾ってもらった会社に恩義を感じ、グローバルだとか億万長者だとか一切無縁の仕事(芝生ガーデニング)をいい具合の低温で愛している。女っ気は全くないけど一方的な一目惚…