『奇貨』/松浦理英子

最近は孤独な中年(男女問わず)が主役の小説となると興味津々で読んでしまうから困る。つまりは自分の近い将来の予習ということ。純文学なんて知ったこっちゃなくて、こんな俗な触れ合いしかできないのが自分である。
孤独が身に染みる40代男性(本田さん)が一応の主人公で、並列で奇妙な距離感の30代女性(七島さん・レズビアン)がいる。展開される話は同性愛の範疇を超えていて、人が人とどう付き合うのか、コミュニケーションについて深々と考えていくような小説に思えた。七島の片思いの相手への慕情がメインかと思いきや、彼女の新しい友人をきっかけに本田はこれまでの人生を振り返り、実は自分が強烈に孤独を感じていたこと、愛情ではないけれども強く繋がりを求める七島への想いへの気づき等々が描かれており、人間の感情について思案することが好物な自分にとっては面白く読める小説だった。