『十三月怪談』/川上未映子

自分が幼少の頃から患っている病気が腎臓のそれであるから、どうしてもそこに敏感に反応してしまって冷静には読めなかった。ていうか、腎臓の病気ってそんなに進行が早く死に至るものってあったっけ?発見が遅れれば致命傷になるのはそうだけど…。
愛しあう夫婦が、死に別れてしまうお話。死んでからの世界を妻と夫それぞれが語るのだが、その様相は全く異なっていてパラレル世界のような展開。どちらも相手への想いの強さが故に苦しんでいる。でもこの“想い”がなければ人は生きている価値なんてないのかもしれないな。喪失感は甚大だけれども、想う相手がいるからこそそこから無でも生きていける。
皆どうやって生きてるんだろうと、いつも思っていることを改めて考えてしまう。これだけ人と人との出会いが限られている中で、自分のために生きることなんてできず、しかし相思相愛の人間との出会いなんてあるはずもない。この小説のように人生の意味を提示されてしまうと、孤独な人間はどのようにこれから歩んでいけばいいのか、たじろいでしまう。