『きんのじ』/馳平啓樹

倒産寸前の自動車会社で働く主人公。自分のことをどこか価値のない人間と思いつつ、拾ってもらった会社に恩義を感じ、グローバルだとか億万長者だとか一切無縁の仕事(芝生ガーデニング)をいい具合の低温で愛している。女っ気は全くないけど一方的な一目惚れで少しだけ思いを寄せてみたり。会社の危ういことが薄々感じられて、徐々に追い詰められていく感のリアルさもすごい。
平凡で低温で、確かな人間臭さ。大好物の世界観。津村記久子ワーキングプア小説より好みだな。これから追っかけていきたい作家さん。