『髪魚』/鈴木善徳

老いた人魚を拾い、家に連れて帰る。いきなりのファンタジーでこれは自分には合わなさそうだという予感も、その読みやすさからぐいぐい引きこまれ一気に最後まで読まされた。面白かった。消費社会の虚無に対する警鐘は既にありふれた視点ではあるけれど、家電や家具にこだわる性向がまさしく自分にドンピシャであり、何か思うところもあった。
しかしこの話も苦しい。会社が危うく、収入が苦しく、精神的に追い詰められる。おいおい、どの小説もこんな感じかよ。しかしこれこそ現実。マジでこの感覚、よく分かるよ。経済的に困窮する中で、熱を失った僕たちは何に価値を見出して生きていくんだろうね。そいうことを考えさせられた。