『八月は緑の国』/木村紅美

32歳の独身女性と女子大学生。二人の視点が交互に繰り返される小説って、面白いよね。個人的には32歳独身女性のやさぐれ感が好み。そこまでするかって点はところどころあるけどね。そして、若い(華の盛りである)女性から32歳独身女性を見るとそりゃあそう評するんだろうとそれも納得。人間って面白くね?これぞ人生って感じ。こういうのを味あわせてくれる作品、大好きよ。
最後はホラー過ぎて怖い。実家が消えたり、自分の賃貸アパート(自分が借りているという事実)が消えたり、この世の世間の希薄さを憂いている物語なのかしら。みんな基本的に一人で生きていて、実家・家族さえもぞんざいに扱っている。一人の気楽さをただ謳歌し、家族との繋がりを信じて疑わない安易さ。いずれ自分は死ぬのだということさえ忘れ、怠惰に安穏と生きてることへの警告を鳴らされているように読み取るのは、さすがに穿ち過ぎか。