『いつも彼らはどこかに 第一回・帯同馬』/小川洋子

面白かった。こんなに暗い人生を題材にする作家さんとは思っていなかったので吃驚した。
遠距離への移動に恐怖を覚える女性が主人公。デパートでのデモンストレーションガール(試食をすすめる売り子さん)を生業としている彼女のその気質も異常さをもつが、お客として登場する(のちに友人手前?の関係になる)女性もかなり歪さを醸し出している。もともと、浮いたファッションで世間からずれていることが強調されていたが、語り出した半生が雑貨の裏の値札をきっかけに全部が嘘ではないかと想起され、その瞬間女性の虚栄心だとか半狂乱な精神状態が垣間見えてゾクッとした。ここがすごく面白かった。
自分はどこにも行けない感覚、遠く外国等で仕事をやり遂げ帰ってくる人たちへの畏怖の念などは、この小説では極端であれども自分も共感できる思いである。人生に対する暗さや狂気を感じさせる描写など、影のような要素が自分好みで良かった(悪趣味だなぁ)。