『おおかみこどもの雨と雪』

面白かった。母親の花は、the 善人とでもいうべき人物。困難を全て一人で背負い込み、労苦を厭わず、そして乗り越えていく。
狼の子供だからといって極端に世間を避ける母親の様を見ていて、思わずにいられなかったのは、例えば現実にある発達障害ADHD等の子供たちのこと。世間は異質なものを絶対に受け入れてくれないということを当然のように前提としていて、それを悲しくは思うけれど、やっぱり現実だと異質な者は疎まれ家族はダメージを受けるだろうなと納得してしまう自分もまた悲しい。
狼の子供という秘密があるとはいえ、ここまで母親の花が自分以外の人間を(正確には旦那以外の人間を)かたくなに信用しないのは何故なんだろう。それほどまでに“普通”ということは大きな要素であり、これほどの善人である花でさえ人間への信頼を持てないものか。*1
さて、そういった背後にある悲しさは感じれど、中身は家族愛に溢れたファンタジーであり、疎開先(?)での人との温かい交流も微笑ましい。一個人として自立していく子供の思春期の成長を見事に描き切り、最後には母親の子からの自立も見せてくれた。内容充実の秀逸な作品だった。

*1:そういえば花は、旦那さんと出会って懇ろになるまでの序盤からでも、どこか孤独で世間から浮いているように見受けたたが、そこら辺から何か推測できるのだろうか。